かんころ餅という「長崎の和すいーつ」

寒くなってくると思い出すのは、

子どもの頃、

石油ストーブの上にのせて焼いた餅。

それも好きだったのは「かんころ餅」だ。

火鉢だともっと風流であろうが、

 我が家には火鉢は無かった。

夜中にちょっと小腹がすくと

お袋が塊を1センチ位の厚さに切って

私と弟に焼いてくれた。

 

焼きたてはとても熱くて、

口の中を火傷しないように

ハフハフ言って食べる。

サツマイモの素朴な香りと甘さが口の中いっぱいに広がり、

 お腹から身体も自然と温まった。

かんころ餅は、元々は五島の保存食らしいが、

保存食にしておくにはあまりにも勿体ない。

焼芋とはまた違った素朴な美味しさ、

どこかほっとさせてくれる美味しさ、

表現すると「長崎和スイーツ」だと言える。

 

かんころ餅はサツマイモともち米、砂糖から作る。

サツマイモを皮をむいて輪切りにし、茹でたものを、

1週間から10日程天日に干す。

この干し芋作りが五島での大切な作業である。

新サツマイモが採れた11月、北風が吹きだす頃に、

寒い中「かんころ棚」と言われる専用の棚で作業はおこなわれる。

この時期は、この風景が五島のあちらこちらで見られるが、

海からの潮風に吹かれ、五島の干し芋は美味しくなると言われる。

1週間から10日程の管理が大変だ。

ここ数年でかんころ餅の生産が随分減ってきたらしいが、

 原因は、この「かんころ」と呼ばれる干し芋の生産不足によるようだ。

また、干し芋は干し芋で、このままでも美味しい。

こうしてできた干し芋「かんころ」を

もち米と一緒に蒸して練り上げる、もしくは搗き、

この過程で砂糖を加える。

完成したかんころ餅、出来立てはふっくらしてとても美味しい。

 

後は家庭で冷凍保存され、一年中食される。

私が好きなかんころ餅は、

長崎県西海市崎戸島の伊達本舗のかんころ餅。

もう120年の老舗のかんころ餅屋だ。

伊達本舗では、かんころ餅を特に「甘古呂餅」と表す。

甘く、古の、懐かしいお餅といった感じだ。

崎戸島で作られるこの「甘古呂餅」は、

五島のかんころと、厳選された佐賀県の美味しいもち米で作られている。

かんころの比率が高く、ふんわりとして芋の香りが高い。

種類はプレーンの物と、よもぎ入りと紫芋かんころ餅の3種類ある。

私は大体プレーンの物が慣れ親しんでいるが、

最近は紫芋の甘味とよもぎの風味もはまりつつある。

 

素朴な長崎の和すいーつをどうぞご賞味あれ。